うつ病を対象とした反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS療法)
rTMS療法はうつ病治療の新しい選択肢です
はじめに:お薬での治療に反応しづらいうつ病に対する新しい治療です。
うつ病の治療には、休養・薬物療法・心理療法などの治療法がありますが、中等度以上のうつ病に対しては、薬物療法が行われるのが一般的です。しかし、薬物療法の効果が現れない方が、約3割程度おられるのが実情です。こうした方については、これまでは、薬物療法の内容を変更したり、認知行動療法などを追加したりしてきました。反復経頭蓋磁気刺激療法(以下、rTMS療法)は、こうした薬物療法に反応しづらいうつ病の方への新しい治療選択肢となります。このたび、当院でも、この治療装置を導入し、薬物療法では効果不十分な中等症以上のうつ病の方に対して、rTMS療法を行うことができるようになりました。
rTMS療法とは:脳の特定部位に磁気刺激を繰り返し行うことで脳機能を改善させる治療です。
rTMS療法では、刺激を行う部位を特定し、その部位に「トリートメントコイル」を用いて、繰り返し一定の磁気エネルギーを加えることによって、脳機能を改善し、うつ病症状の改善をめざすものです。
rTMS療法が抗うつ効果を発揮するしくみについては、まだ完全に解明されていない点がありますが、磁気刺激を加えることで、脳の細胞の電気的活動を活発化させると考えられています。
対象となる方:rTMS療法の対象は一定の条件を満たしたうつ病の患者さまになります。
rTMS療法の適応となるのは、「18歳以上で、1種類かそれ以上の抗うつ剤による十分な薬物療法を行ったにも関わらず、効果があがらなかったうつ病」の方になります。また、副作用のために抗うつ剤が十分内服できない方も対象になる可能性があります。
磁気刺激を行うため、心臓ペースメーカー・人工内耳・磁性体クリップを使用されている方は行えません。
実際にrTMS療法の対象となるかどうかは、一定のトレーニングを受けた精神科専門医による診察を受けていただいてから判断することになります。
安全性と副作用:副作用が比較的少ない安全な治療です。
rTMS治療は従来の治療法に比べ副作用が非常に少ない治療法ですが、以下のような副作用が知られています。
- 比較的よくみられる副作用:頭皮痛・刺激痛(30%前後)、顔面の不快感(30%前後)、頸部痛・肩こり(10%前後)、頭痛(10%未満)。
ほとんどが刺激中だけにみられる副作用で、刺激を一時的に弱めたり、刺激に慣れることによって、軽くなります。
- 非常に少ないが重篤な副作用:けいれん発作(0.1%未満)、失神(頻度不明)。
最も重症の副作用としてけいれん発作があげられますが、頻度は非常に低いまれな副作用です。抗うつ薬によるけいれん誘発の危険率(0.1〜0.6%)と比較しても、rTMS療法が特別にけいれん誘発のリスクが高い訳ではありません。
- まれにみられるその他の副作用:聴力低下、耳鳴りの増悪、めまいの増悪、急性の精神症状変化(躁転など)、認知機能変化、局所熱傷など。
治療効果について:治療効果には限界があり、万能の治療ではありません。
前に述べたように、中等症以上のうつ病に対する治療としては、抗うつ薬による薬物療法が一般的ですが、およそ3割の方で抗うつ薬の効果が不十分であることが知られています。rTMS療法は、そのうちの3〜4割の方に改善がみられます。逆に言うと、抗うつ薬が効かない患者さんの6〜7割はrTMS療法にも反応していないことはご留意ください。
治療の流れ:当院では、入院していただいて、rTMS療法を行います。
まず外来で、専門医の診察により、rTMS治療の対象になるかどうかを判断します。rTMS治療の対象となると判断され、治療を希望される場合は、入院日を決定します。入院後rTMS療法の開始までに、血液検査や、必要に応じて頭部CTや脳波検査が行われます。場合によっては、薬物療法の整理を行う期間が必要なことがあります。最終的に、rTMS療法の対象となり、安全に行える状態であることを判断したうえで、専門医からの説明と同意書への署名をいただきます。なお、rTMS療法が開始となっても、治療の同意を取り消して中止することができます。
rTMS療法そのものは、その方の経過による違いがありますが、4週間から6週間かかります。1回の治療時間は約40分(初回治療のみ、刺激する部位や強さのセッティングに、20分程度かかります)で、週5回をめどに行われます。最大週5回6週間、計30回を限度とします。
治療費用について
rTMS治療には健康保険が適用されます。その為、入院して治療を受けられる際は、高額療養費制度をご利用になることで、定められた医療費の負担上限額を超えることはありません。
治療に関するお問い合わせ:まずはチェックリストをご確認の上、現在の主治医とご相談ください。
前述のように、rTMS療法をうけていただくには、一定の条件があります。まずは「適応チェックリスト」でご確認ください。また現在の診断やこれまでのお薬での治療歴の確認が必要になりますので、主治医の先生とご相談し、紹介状を作成していただいた上で、以下までご連絡ください。
「rTMS(あーるてぃーえむえす)治療希望」とおっしゃってくだされば担当窓口におつなぎします。
お問い合わせ先
〒702-8508
岡山市南区浦安本町100-2
公益財団法人 慈圭会 慈圭病院
生活福祉支援課
月~金 8:30~17:30
(祝日・年末年始を除く)
086-262-1191
(生活福祉支援課)